「無辺世界」より
私が愛するだれかが、私を愛するだれかが、
私を見失わないような、みようと思えばいつ
でもすぐにみつけられるような場所に、私は
常に立っていようと思う。
どんな花が咲いてどんな風が吹いて私をどこ
かへ誘うとしても、その方向があの人々に
とって私を見失う方向であるとしたら、私に
とってあの人々を見失う方向であるとしたら、
私は決して、ただの一歩も、ここから動きだ
さないだろう。
私にとってもっとも大切なことは、あの、同
じ悲しみでありよろこびを、みとめあえる
人々の存在を確信することである。
銀色夏生
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