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生命の階層説

マックス・シェーラー 生命の五階層説

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20世紀の前半、改めて「人間とは何か」、人間はどの点で他の生物と本質的に区別されるのかという問いに迫ろうとした学派がある。マックス・シェーラーによって提唱された「哲学的人間学」は、自然人類学、生物学、精神分析、ゲシュタルト心理学、社会学などの当時の人文・自然科学の最良の成果をふまえ、これらを総合することによって「人間とは何か」との本質を明らかにしようとした。

 

マックス・シェーラーは生命世界の諸階層に見られる心的諸能力を、①植物的生の段階であり、意識と表象をまったく欠いた「感受衝動(衝迫)」、②下等動物の生の段階で、特殊な環境世界に適合した生得的、遺伝的な「本能」、③高等動物の学習、模倣と習慣的行動にかかわる「連合的記憶」、④そして新しい未経験の事態に対処し、課題を自ら解決しうる「実践的知能」の四つに分類した。

「実践的知能」に関しては、最も優れたチンパンジーと人間とのあいだには質的な差異が存在せず、量的差異しかないと見なす一方で、人間は生命世界を超えた「精神」の能力を所有することによって、動物からは本質的に区別されると見なした。

「精神」とは、いわゆる理性を含むとともに、根源現象や本質内容の直観、また好意、愛、悔恨、畏敬、浄福と絶望、自由な決断などの意志的・情緒的作用を含むものである。

 シェーラーによれば、「精神」を所有するからこそ人間には、衝動によって束縛された動物の環境世界とは異なった「世界」があり、「世界開放性」があるとした。

 

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